マッケンジー法®に対する誤解

マッケンジー法®について様々な誤解があります。そのうちのいくつかを上げてみます:

Japan Common Misconceptions v3

こうした誤解を、以下に解いていきましょう:

マッケンジー法(MDT)は、単なる一連のエクササイズではありません

エクササイズは重要な要素ではありますが、なによりMDTは評価であり問題解決の考え方なのです。セラピストは、病歴から症状と負荷との関連性を示唆するヒントを読み取ります。問診の段階から、セラピストは鑑別を始めています。メカニカルな要素、医学的な要素、生物心理社会的要素、それらの複合要素、こうした観点から問題を捉えてゆきます。

メカニカルな要素だとすると、Derangement、Dysfunction、Posture、OTHER、どのカテゴリーになるだろうか。その推測を、問診の後で行う理学検査を通して検証してゆくのです。

マッケンジー法は Derangementについてだけではありません

Derangementは非常に多いですが、Derangementだけを対象にしているわけではありません。DysfunctionもPostural も重要なカテゴリーです。OTHERというカテゴリーの中にサブカテゴリーがいくつもあり、マッケンジー法の認定セラピストは、これらについても鑑別と適切なマネージメントを展開できます。このサブカテゴリーには、狭窄症、慢性疼痛(chronic pain)、仙腸関節由来の痛み、メカニカルな手段では改善しない神経根症、外傷・外傷後、術後などがあります。

マッケンジー法は、伸展だけではありません

結果的に伸展で改善が得られることが多いですが、マッケンジー法ではあらゆる方向が評価、施術のオプションとして考慮されます。どの方向を採用するかは、負荷検査(反復運動検査、姿勢保持検査)で得られた症状面、所見面での反応によって決められるのです。

マッケンジー法は、椎間板の病態に対してだけではありません

椎間板モデルが脊椎のDerangementを理論的に説明する際に便利ではありますが、多くの腰痛では本当の原因は解明されていません。ここで強調しておかなければなりませんが、マッケンジー法では、病理解剖学的な診断に頼ることなく、負荷検査に対する症状と所見面での反応に基づいて分類するという確たるシステムを採用しているのです。そしてその分類によって、マネージメントを組み立てるのです。

マッケンジー法は、反復運動だけではありません。

姿勢保持や中間位での反復運動も必要に応じて活用します。

マッケンジー法は、生物心理社会的因子を多角的に考慮します

患者教育や患者が主体的に自らの問題に対処できるようにするなど、マッケンジー法こそ、生物心理社会的因子を包括的に捉えたシステムです。マッケンジー法の認定セラピストは、恐怖心による回避行動や受動的対応などの心理社会的阻害因子に配慮してマネージメントを組み立てるよう教育を受けています。

マッケンジー法は、必要に応じて徒手手技を活用します

原則として、患者自身による手技(hands off)が優先されますが、mobilisationやmanipulationといった徒手手技も負荷を加える流れの中で必要に応じて活用してゆきます(Force ProgressionsやForce Alternatives)。患者の施術者への依存をできるだけ抑制し、患者が主体的に問題に対処できるようにする為に、患者教育や自己治療に主眼を置いています。この流れの中で、患者自身による手技だけでは改善が認められなければ、セラピストによる徒手手技を活用することを考慮します。ただし、ここで注意しなければならないのは、セラピストによる徒手手技の使用目的は、あくまでそれによって患者自身による自己マネージメントが可能になるようにする為ということです。                   

マッケンジー法は、脊椎に対してだけではありません

マッケンジー法の考え方、システムは、脊椎のみならず四肢に対しても適用されます。その有用性については、特に近年、研究によっても示されるようになってきました。

マッケンジー法は、分類の体系とも言えます。痛みや機能障害が、メカニカルな手段(姿勢や動作など)によって改善できるタイプなのか、そうではないタイプなのかを鑑別します。