マッケンジー法の概略

マッケンジー法®(Mechanical Diagnosis and Therapy® (MDT))は、脊椎や四肢の問題に対するエビデンスに基づいた評価とマネージメントのシステムです1-4。マッケンジー法®の評価は、患者をタイプごとに分類するという点において、その正確性が研究によって示されています5

マッケンジー法の評価では、特に脊椎由来の痛みに対して、正確に効果的に患者を分類できます。メカニカルな原因によるものではない痛み、メカニカルな施術が禁忌の患者を速やかに抽出して適切な部門に紹介することができます6。脊椎由来の患者では、その患者に適したエクササイズを行うことで、そうではない場合よりも良い結果が得られるということがこれまでの研究によって示されています7

マッケンジー法の認定セラピストが、その患者に適した姿勢指導とエクササイズ指導を行えば、患者自身が自らの問題を自己管理できるようになります。こうした方法を通して、患者が主体的に自身の問題に対処できる能力を高めることが出来ます。またマネージメントに対する満足度や費用対効果も高めることも出来ます8,9

参考文献:

  1. McKenzie and May 2000, 2003, 2006,
  2. May and Donelson 2008,
  3. Chorti et al. 2009,
  4. Clare et al. 2004.
  5. May et al. 2006
  6. McKenzie and May 2003.
  7. Long et al. 2004, 2008.
  8. Manca et al. 2007,
  9. Machado et al. 2010.

 

第8回国際椎間板療法学会で講演するRobin McKenzie

マッケンジー法®の構成要素

マッケンジー法は、大きく4つの段階から構成されます。

Assessment

評価

Assessmentマッケンジー法では、妥当性が担保された評価によって、患者を分類します。分類の基準は、メカニカルな負荷に対する反応のパターンです。どの分類にどれに当てはまるかで、その患者のマネージメントが決められます。

分類には、主に3つあります。それらの分類の理論的背景は次のように考えられています。Derangement Syndromeと呼ばれる分類は、関節における動きが制限されて結果的に痛み等の問題が引き起こされている。Dysfunction Syndrome と名付けられた分類は、軟部組織の健常性が失われていて、それにメカニカルな負荷が加わったときに痛みが引き起こされる。Postural Syndromeでは、組織に過剰な負荷が長時間加わって痛みが引き起こされる。

問診で姿勢や動作が症状にどう影響するかを詳細に把握してから、理学検査において様々な方向への負荷検査を行います。負荷検査では、特定の負荷を加えた際に症状がどう変化するかを確認します。脊椎の患者では、およそ50-70%で短期間に改善が認められます(発症からの期間にも影響されますが)。多くの場合、特定の方向に負荷を加えると、痛みの部位がより遠位からより近位に収束してくる現象が認められます。さらには痛みが正中位にまで痛みが移動してくることがあります。この現象を痛みの中央化(Centralisation)と呼びます。痛みの中央化が起きる患者は、この現象が起きない患者よりも改善度合いが優れているという事が多くの研究で示されています1,2

痛みの中央化と共に、可動域も徐々に回復してきます。こうした現象は、Derangement syndromeで起きます。Derangement syndromeは、マッケンジー法の分類で最も多く認められるものです。

マッケンジー法の評価では、マッケンジー法による施術が適応にならないケースを鑑別することが重要です。マッケンジー法に精通したセラピストには、この鑑別技能が備わっています。こうしたケースは、速やかに、更なる医学的検査を受けるようにするなり、適切な専門部門へ患者を紹介します

参考文献:

  1. Werneke et al, 1999, 2005, 2008
  2. May and Ania 2012
Classification

分類

カテゴリーは大きく分けて以下の4つになります。

  • Derangement Syndrome
  • Dysfunction Syndrome
  • Postural Syndrome
  • OTHER
    • OTHERは、さらにいくつかのサブカテゴリーに分けられます。

全てのカテゴリーおよびOTHERの中のサブグループは、それぞれ明確に定義されていて分類がしやすいようになっています。

それぞれのカテゴリーは、反復運動検査や姿勢保持検査で得られた反応のパターンによって定められています。マッケンジー法は、包括的な分類システムです。先に紹介した3つのカテゴリー(syndrome)のいずれにも当てはまらないケースは、OTHERというカテゴリーに入るわけですが、重篤な病理・病態はこのOTHERになります。OTHERには、他にも、メカニカルな原因ではないケース、慢性疼痛病態(Chronic Pain)などがあります。

Treatment

マネージメント/ 施術

3つのsyndromeのいずれかに分類されたならば、それぞれの方針に従ってマネージメントが行えます。Derangement Syndromeであれば、Centralisationが起きる方向、もしくは症状の程度が改善する方向に動かしてゆきます。Dysfunction syndromeであれば、痛みが誘発される方向に動かして、時間をかけながら軟部組織のリモデリングを図ってゆきます。Postural Syndromeでは、姿勢矯正によって関節を中間位に整えて、最終域で長時間負荷がかかることがないようにします。

マッケンジー法®では、患者教育を通して患者が主体的にマネージメントに取り組むようにします。自分自身が主体的に自身の問題を解決するよう、自身のマネージメントに責任を持って取り組むようにします。こうした考えから、まずは患者自身による負荷から始まります。患者自身による負荷では不十分な時に、セラピストによる手技(例:mobilisation)を補助として使用します。

Prevention

予防

問題解決に必要な運動や姿勢を活用して、患者が自分でマネージメントする術を身につければ、その運動や姿勢を再発予防にも利用できます。研究によれば、脊椎の問題は再発率が高く、再発を繰り返すと次第に重症化する傾向にあります。よって、セラピストに治してもらう治療で短期間しかその効果が継続しないような治療よりも、再発を予防する事の方がより重要です。